円高の犯人は誰か

浜林正夫  2011.10.3付

円高が急速にすすんで輸出関連企業は悲鳴をあげています。なぜこういう円高がおこったのでしょうか。  

 ふつう教科書では為替相場は貿易収支で決まると説明されています。つまり日本の貿易が黒字なら円が上がり赤字なら下がるということです。 

 たしかに日本の貿易は、手元の資料で見ますと2004年から09年まで、リーマンショックの08年以外はすべて黒字で、この6年間の黒字トータルは43兆円に達します。これと対照的にアメリカはこの間ぜんぶ赤字です。これでは円が上がり、ドルが下がるのは当然だという気がします。 

 しかしいまの円高は貿易収支によって説明できる程度の生易しいものではありません。 

 そこでよく持ち出されるのは、ドルもユーロも不安定なので安心できる通貨は円だということで円が買われているという説明です。日本も国債が900兆円に達しようとしているので、私たちは円は大丈夫といわれると本当かなと思ってしまいますが、それはともかくとして、円なら安心といって円を買っているのは誰なのでしょうか。 

 つまり貿易にともなう通貨の売り買い以外に売り買いがあるのではないかということです。それは国境を越えた株や債権などの売買で、その総額は1日で4兆ドルといわれています。これを1ドル=76円で換算しますと364兆円となります。日本の貿易額は輸出入あわせて1年で150兆円ぐらいですから、その2倍ぐらいの貨幣取引が1日でおこなわれていることになります。誰がやっているのかというと、銀行や証券業者などの金融機関のほかに、アメリカのヘッジファンドのような投機的な投資会社がやっていることは明らかです。 

 最近このような取引を制限し、投機を抑えるために貿易取引以外の貨幣取引に税金をかけようという話がEUから出てきました。

これにはアメリカが反対しているので、うまくいくかどうかはわかりませんが、いずれにせよ、私は急激な円高の真犯人は投機的な貨幣取引だと思っているのですが、いかがでしょうか。