検察に忖度を生み出す検察庁法改正案に反対します

検察に忖度を生み出す検察庁法改正案に反対します 

2020.5.14 内閣府(首相官邸)、衆院内閣委員会、自民、公明、立民、共産、国民、社民、維新の各党に声明文を送付しました。

 

 

検察に忖度を生み出す検察庁法改正案に抗議します

 

 

 

1 検察庁法改正法案

 

 今国会において安倍内閣が検察庁法の改正法案を提出し、今週中にも衆議院の採決を行うと報 道されています。  検察官の職務を定める検察庁法の現行の規定では、定年について、検事総長は65歳、他の検 察官は63歳に定めています。定年延長の制度はありません。  国会で審議されている改正法案は、この検察官の定年について段階的に65歳まで引き上げ ると同時に、役職については63歳での定年としながら、特例として内閣の判断で最長3年延 長できるとしています。  以下述べる通り、この改正法案は、時の内閣が検察官の人事に介入することで、検察官に内閣 への忖度を生み出し、検察官の職務を内閣に都合よく歪めるものであって、私たちはこれに強く 反対します。

 

 

 

2 検察官に定年延長制が導入されなかった理由

 

 1947年に制定された検察庁法は、検察官の定年年齢を決めるとともに、それまで存在した 検察官の定年延長制度を廃止しました。 それは、検察官が、警察に対する捜査指揮権や、被疑者を裁判にかけるか否かを判断する起訴 権限を有し、時には総理大臣をはじめとする政治家による汚職事件の捜査を行うなど司法の重要 な権限を有することから、政治による人事介入を防ぎ司法の独立を確保するためでした。時の政 権が恣意的に検察官のえり好みをして定年延長することをできないようにしたのです。 一般の国家公務員に定年制が導入されたのは1981年になってからで、検察官の定年制度と は別につくられた制度です。検察官に、国家公務員法の定年や定年延長の制度が適用されないこ とはこれまでの政府見解でもありました。

 

 

 

3 経過から見ても検察への人事介入を意図していることは明らか

 

1月31日、安倍内閣は東京高等検察庁の黒川弘務検事長の定年を半年延長する閣議決定をし ました。これまで閣議決定で、検察官の定年が延長された例はありません。報道では、菅官房長 官と親しい黒川氏を検事総長に充てることがこの定年延長の目的とも報じられています。黒川氏 の定年延長についての安倍内閣の説明は二転三転し、是が非でも黒川氏の定年を延長させようと の異常な姿勢でした。 今回の改正法案は、検察官の人材活用ではなく、このような強引な検察への人事介入を常態化 しようという意図で提出されたものです。野党から、上記の一律の定年延長を行い、②の内閣 による特例は削除するとの修正提案がなされたにもかかわらず、安倍内閣はこれに応じようとし ません。安倍内閣の意図が、検察官の定年を延長して人材活用をすることではなく、内閣の意向 により人事を左右しうるの法改正にあることが、このことからも明らかです。

 

 

 

 

 

4 ファシズムの足音

 

 自分の意のままに捜査権や警察権を動かすことができる。これは時の権力者の究極の夢ではな いでしょうか。政敵や反対勢力があれば、捜査機関を動かしプライバシーを暴きスキャンダルを 流すことも、刑事事件をでっちあげて信用を失墜させることも、反対する活動家を取り締まり弾 圧することも思い通りです。その一方で自分たちは、友達からの依頼に便宜を払ったり、公的行 事を利用して自己の支持者にご馳走をふるまったり、選挙違反をしたりしても罪に問われる心配 はなくなります。これはもはや法治国家ではありません。独裁国家の姿そのものです。 安倍内閣は官僚人事を意のままに掌握することで、森友・加計問題のような忖度行政を生み出 しました。これを検察でも実現しようというのがこの法案の本質です。これが実現してしまうと ファシズムの足音がすぐそこに近づいてしまいます。

 

 

 

5 #検察庁法改正案に抗議します

 

 新型コロナ感染症の拡大により多くの国民が苦しんでいます。安倍内閣による感染防止対策や 国民の困難に対する経済政策が極めて遅いことは度々指摘をされています。それでも多くの国民 は、政府等からの自粛要請に応え、苦しい中でもこれに耐えて生活しています。国民の命と暮ら しを大切に考える内閣であれば、今は全ての力を新型コロナ対策に向けるのが本来の姿ではない でしょうか。  なぜ、これだけ国民が苦しんでいる今、内閣の権力保持のための法案を成立させる必要がある のか。これが国民の素直な疑問と怒りです。検察庁法改正法案への反対の声が SNS でも短期間で 大きく広がった理由です。私たちは、新型コロナ感染症の拡大により、内閣や政治家の政策によ り、私たちの生命や財産が大きく左右されることを実感しました。選挙がいかに大切なのか、身 に染みて理解しました。国民が声を上げることの大切さも知りました。この国民の声を無視する などということは民主主義国家で許されることではありません。 私たちは、#検察庁法改正案に抗議します。

 

 

 

2020年5月14日

 

 

 

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